大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和56年(特わ)191号 判決

主文

被告人を懲役一年六月及び罰金五〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、昭和三五年に○○○○大学を卒業し、勤務医を経て昭和四五年九月に、医師である父親所有の東京都○○区○○○町○丁目○○番○○号○○○○○○○ビルにおいて「○○○○クリニック」の名称で内科医を開業し、その後一時病気により中断したものの、昭和五一年七月に再開し、昭和五二年六月ころには、名称を「○○○○○○○○○クリニック」とあらため主として美容整形の診療を行なうようになつたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、

第一  診療収入の一部を除外して薄外預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ、昭和五二年分の実際総所得金額が一億三四八五万五五六八円(別紙(一)修正損益計算書参照)あつたのにかかわらず、同五三年三月一五日、同都同区○○○○丁目○○番○号所在の所轄○○税務署において、同税務署長に対し、同五二年分の総所得金額が九九万一一七七円でこれに対する所得税額が源泉徴収税額を控除すると四五七三円の還付を受けることとなる旨の虚偽の所得税確定申告書(昭和五六年押第七四四号の1)を提出し、もつて不正の行為により同年分の正規の所得税額八五三五万六一〇〇円(別紙(三)税額計算書参照)と右申告税額との差額八五三六万〇六〇〇円を免れ、第二 昭和五三年分の実際総所得金額が三億四〇一六万八二三六円(別紙(二)修正損益計算書参照)であり、これに対する所得税額が二億三九五五万円(別紙(三)税額計算書参照)であつたのにかかわらず、同都○○○区○○○丁目○○番○号○○○○銀行○○支店及び同区○○○丁目○○番○○号○○信用金庫○○支店等において仮名の普通預金口座を開設して診療収入の一部を預け入れるなどしてその所得を秘匿し、右所得税の納期限である同五四年三月一五日までに、前記○○税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで右期限を徒過し、もつて不正の行為により右同額の所得税を免れ

たものである。

(証拠の標目)〈省略〉

(補足説明)

公訴事実第二の昭和五三年分の所得につき、検察官は、訴因において、被告人が無申告のまま昭和五四年三月一五日(以下、特別の判示がない限り、月日は昭和五四年のものを指す。)の納期限を徒過した点を把え、この時点で無申告ほ脱犯が成立した旨主張している。これに対して、弁護人は、情状論としてではあるが、被告人は、右納期限の前である二月八日に別件の医師法違反容疑で逮捕され、以後引続き身柄を拘束されて三月一五日当時も拘束されていたもので、被告人本人でなければ税務・経理の内容がわからないうえに、関係書類、帳簿等が押収されてしまつている状況下にあつたため、納期限前の三月一〇日にその延長申請をしたのであるが、これに対する税務署側の対応状況をみると、本件における法定納期限を三月一五日とすることはできないし、また、その時点でほ脱犯の犯意があつたともいえないから、本件において無申告ほ脱犯が成立するかは疑わしく、たとえほ脱犯が成立するとしても、その時期については問題があるなどと主張する。よつて、以下この点につき当裁判所の判断を付記することとする。

一まず、本件において法定申告納期限の延長の有無について検討する。この点につき、国税通則法一一条一項は「国税庁長官、国税不服審判所長、国税局長、税務署長又は税関長は、災害その他やむを得ない理由により国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他書類の提出、納付又は徴収に関する期限までにこれらの行為をすることができないと認めるときは、政令で定めるところにより、その理由のやんだ日から二月以内に限り、当該期限を延長することができる」と規定し、これを受けて同施行令三条二項は、「国税庁長官、国税不服審判所長、国税局長、税務署長又は税関長は、災害その他やむを得ない理由により、法一一条に規定する期限までに同条に規定する行為をすることができないと認ある場合には、前項の規定の適用がある場合を除き、当該行為をすべき者の申請により、期日を指定して当該期限を延長するものとする」と規定している。したがつて、これらの規定によりやむを得ない理由があるとして税務署長等により法定の申告納期限が延長された時には、ほ脱犯の既遂時期もそれに伴つて延びると解されるが、本件において、税務署長により法定申告納期限の延長を認める直接明示の処分はなされていない。しかし、この処分は納税義務者に利益なものであり、右施行令においても、「期日を指定して」とするほかには格別の方式が定められているとはいえないから、本件で黙示的にしろ右の処分がなされたと認められるかが問題となる。

そこで、本件の事実関係をみると、関係証拠によれば次の事実が認められる。すなわち、被告人は、看護婦に医療行為をさせていたという医師法違反の容疑により、昭和五三年一二月二一日以降五回にわたつて捜索・差押を受け、昭和五四年二月八日には逮捕され身柄勾留中のまま同年三月一日に起訴され、以後同年四月一八日に保釈釈放されるまで千葉県市川警察署等に勾留されていた。ところで、被告人は、かねてより所得税を免れるため、診療収入を除外して仮名の預金口座に入金するなどしていて、前年の昭和五二年分についても判示のように虚偽過少の申告をして多額の所得税を免れていたのであるが、会計処理も杜撰であつて、経費について大学ノートにメモ程度の記載をしていたのみで、その他には会計帳簿はつけておらず、収入の大半を占める美容整形の自由診療収入についてはカルテに金額を書き込む程度で、収入を集計することもなく、前年の申告も適当な数字を確定申告書に記載するというものであつた。肝心のカルテについても、医師法違反の証拠となることをおそれ、自宅屋上の電気室に隠しておいて第一回の捜索時に発見を免れ、その直後の昭和五三年一二月末一部を廃棄したが、その数は一枚一人で、昭和五二、五三年の両年分にわたり三〜四〇〇枚に達した。なお、残余のカルテや右大学ノート等は押収されている。被告人は、昭和五三年分の確定申告にあたり、身柄拘束中であつたため弁護士の助言も受けたうえで、妻○子を通じ所得税の申告等の期限の延長申請をすることになつた。妻○子は被告人の指示を受けて、三月一〇日所轄○○税務署に赴き、窓口係員の指示により、その場で延長する期限を四月一五日までとし、理由を「医師法違反の疑いにより身柄拘留中のため診療カルテ、仕入れ及び支払い書等押収された為」と記載した所得税の申告等の期限延長申請書(昭和五六年押第七四四号の5)を提出したが、これには税務署の受付印は押捺されていない。右提出を受付けるにあたつて同税務署係員から「一応受けますが上の人が判断することなのでどうなるかはわかりません。何かあつたら電話で連絡をします。」との説明があつたが、その後何の連絡もなかつた。そこで、被告人は、なお身柄を拘束されていたので、再び今度は六月一五日までの延長を求めることにし、妻○子が同様にして被告人の指示を受けて四月一〇日前記○○税務署に赴き、一回目の申請にあたつて応対した同じ係員の教示により「前回申請した期限を四月一五日、今回申請する期限を六月一五日」とし、理由を「本人が医師法違反の疑いにて現在身柄拘置中。又、カルテ等出納資料が押収されたままであります」と記載した所得税の申告等の期限再延長申請書(前同号の6)を提出したが、この時も右係員から、前同趣旨の説明があつただけで、一回目の申請の帰すうについては何らの言及もなかつた。もつとも、この申請書には、同日付の受理印が押捺されている。五月下旬になつて、○○税務署所得税第二部門国税統括調査官河北通永は、妻○子に対し電話で「六月一五日までの延期申請は認められない。去年と同じでよいから早く申告するよう」にと伝えた。その二、三日後、妻○子は、被告人と相談のうえ、そのような申告はできない旨河北に電話で応答した。ところが、五月二一日付をもつて、右四月一〇日付の再延長申請を棄却する旨の○○税務署長作成の通知書が係員の手により同日都内○○○区○○の被告人方の郵便受に投函され、そのころ被告人はこれを了知した。七月一〇日ごろになつて、被告人は、○○税務署へ赴いて右河北と面会したが、その際「期限が過ぎているので一刻も早く出してもらいたい。係がかわるので今週中に出して欲しい。それまでに出さなければ、こちらの方で検察庁へ行つて資料をみて処理する」などと督促を受けた。そこで、八月一七日、二一四九万〇六六九円の赤字で、課税される所得はない旨の確定申告書(前同号の2)及びその収支明細書(前同号の4)を○○税務署に提出して受理された。この間の七月二七、三一日の二回にわたつて証拠物につき還付がなされ、また、その後の九月一一日に査察を受けるに至つた。以上の各事実が認められる。

これによれば、○○税務署では、一回目の申請に対しては明示の棄却処分をしないまま、同じ係員において再度の延長申請を受理しているのであり、しかも前示棄却の処分は形式的には二回目の延長申請のみについてなされているにすぎないのであつて、これらの事情に加えて、窓口係員の二度にわたる応対時の言動をも併わせ考えると、期限の延長についてみなし規定を置いている法人税法七五条五項や青色申告承認についてみなし規定を置いている所得税法一四七条等との対比を念頭においてもなお、本件は一回目の申請に対して単に応答しないという不作為があつたというに止まらず、これを超えて黙示の延長処分があつたとみるか、あるいは禁反言又は信義誠実の原則適用の結果として期限延長を認めるべきであるとするなどの見解も考えられないではない。しかし、証人河北通永の当公判廷における供述によれば、窓口係員において最初の申請書を受け取りながら受理印を押捺せず、それ以降の手続をとらなかつたのは、申請があつたことを失念していたためであり、その後この失念に気付きながら、税務署側において一回目の延長申請に対し棄却の決定・通知をしなかつたのは、延長申請に理由があると判断したからではなく、処置を検討した時点で既に延長を求める期限の四月一五日が経過していたうえ、一回目と二回目とで申請の理由が同じであつたことから、二回目の申請に対して申請理由はやむを得ない理由に当らないとして棄却決定をして通知することにより、その効力が一回目の申請にも波及すると判断したことによるものであることが認められる。これによれば、税務署側としては、一貫して法定の申告納期限を延長する意思はなかつたのであつて、延長を認める黙示の決定があつたとは到底認められない。確かに税務署側の対応に適切さを欠いた点のあることは否定できないが、前判示の諸事情の下においては、いまだ禁反言や信義誠実の原則を適用して期限延長を認めるべきものとはいえない。

そもそも、前示のように被告人が押収処分を受け、逮捕勾留されるに至つたのは、まさに被告人自身の責に帰すべき事由によるものであるうえ、前示のような杜撰な会計処理やカルテの廃棄状況に照らして考えると、右の強制処分の有無は被告人の申告準備に決定的な影響を及ぼすものではなかつたといえる。そして、関係証拠によれば、被告人は、年間の収入金額を集計したことはなかつたものの、これを毎日一括して自宅に持ち帰り仮名預金などにしていたことから、年間を通じ収入ひいては所得の概要を把握していたことは明らかであり、本件が白色申告の事案であることにかんがみると、被告人がほ脱の意図を放棄して正しい申告をする気持になりさえすれば、たとえ勾留中であつても、妻を通すなどして三月一五日までに概算により申告し、必要に応じ後日修正申告、更正の請求などをすることも十分に可能であつたと認められる。本件において、客観的にも法定の申告納期限を延長すべきやむを得ない理由はなかつたというべきであり、○○税務署が期限を延長しなかつたことを違法とすることもできない。

また、右のような事情にかんがみると、法定の申告納期限である三月一五日までの正当な申告・納付が被告人に難きを強いるものであつたともいえない。

二次に、被告人が妻を通じ三月一〇日に申告等の期限延長申請書を提出していることとの関連で、ほ脱の犯意の有無が問題となる。

まず、この点に関する被告人の供述は、捜査段階と公判廷とで必ずしも趣旨を同じくするとはいえず、公判供述も前後一貫しない点が見受けられるが、被告人において、少なくとも、一回目の期限延長申請が受理され、承認されたと誤解ないし誤信していたことは否定することができない。もつとも、被告人が右のように誤信するに至つた時期が三月一五日の前か後か必ずしも明らかでなく、前示のような三月一五日を経過した後に生じた事情などは、三月一五日の時点における誤信の性質ひいては犯意の有無に何らの影響を及ぼすものでないといえる。しかし、三月一〇日の延長申請時における税務署係員の応対は前示認定のとおりであつて、妻○子の証言や被告人の検察官に対する昭和五六年一月三一日付供述調書などによれば、延長申請を受理されながら、その後税務署から何の連絡もなかつたことから、被告人も右のような誤信を抱くに至つたものと認められ、こうした誤信が三月一五日までに生じていたとしても、あながち虚偽と断ずるのは相当でないが、右の誤信も、単に「申請したのに通知がない」ことから延長の処分があつたという程度のものにすぎないといえる。

そのうえ、本件においては、前示認定のような被告人の前年度の虚偽過少申告、杜撰な経理処理、カルテの隠匿・廃棄といつた事実関係に加えて、更に関係証拠によれば、以下の事実が認められる。すなわち、被告人は、前記のとおり二月八日に別件の医師法違反によつて逮捕勾留されていたところ、右逮捕などに際し、予め実家の方に移し替えておいたものを除き多数の仮名預金通帳が差押えられ、また、新聞にも昭和五二年分の所得について脱税の疑いが強いと報道されたことなどから、昭和五三年分の所得については「今までのような申告では通らない。ある程度資料に裏付けられた数字を申告しなければならない」と考えたものの、いまだ脱税の意図を放棄する気になれず、脱税額・申告額の決定に躊躇し、また現状では申告分が正しいものであるとみせかけるための裏付資料の収集ができないために、妻○子に指示して二回にわたり申告等の期限延長申請をさせた。そして、保釈出所があり、延長が認められないと知つてからも、申告のために必要であるはずの過去の仮名預金の調査を行なうこともなく、八月一七日前記のとおり赤字申告をした。この赤字申告にあたつても、父親からの借入金を仮装するなどした。また、右申告後に証券会社の担当社員に依頼して自己の割引債、国債、株式等の総額を調べさせたが、これも修正申告に当たり過少に申告して正当な申告であると仮装するためであつて、右調査結果により昭和五二年・同五三年分の所得額が三億八〇〇〇万円程度とみられたにもかかわらず、うち三億円ぐらいを修正申告しようとして、これに見合う割引債等のより分けを依頼するなどしたほか、九月一一日査察を受けた当初、求められながら債券類を素直に提出しようとしなかつた。以上の事実が認められる。

これによれば、被告人は、逮捕以前から査察を受けるまで一貫して脱税の意図を有していたことは明らかであり、再度にわたる期限延長申請も脱税のための巧妙な手段であつたというほかはない。被告人は、このような意図の下に法定の申告納期限である三月一五日を徒過したものということができる。そうすると、たとえ、三月一五日当時、被告人に虚偽過少にせよ確定申告の意思があり、かつ前示の誤信があつたとしても、虚偽過少申告ほ脱犯と無申告ほ脱犯とは、ともに正当税額を申告しないという不作為を基本とするものであることにかんがみると、以上のような事実関係のもとでは、被告人にほ脱犯の犯意を否定ないし阻却すべき事由があつたといえないから、三月一五日の経過をもつて被告人に判示の無申告ほ脱犯が成立していたことは明らかである。なお、その他、犯罪の成立を否定ないし阻却するような事情は何ら認められない。

(確定裁判)〈省略〉

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、いずれも行為時においては、昭和五六年法律第五四号脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律による改正前の所得税法二三八条一項に、裁判時においては右改正後の所得税法二三八条一項に該当するが、右は犯罪後の法令により刑の変更があつたときにあたるから刑法六条、一〇条によりいずれについても軽い行為時法の刑によることとし、いずれも所定の懲役と罰金を併科し、かつ各罪につき情状により所得税法二三八条二項を適用することとし、以上の各罪と前記確定裁判のあつた罪とは刑法四五条後段により併合罪の関係にあるから、同法五〇条によりまだ裁判を経ていない判示各罪について更に処断することとし、なお、右の各罪もまた同法四五条前段により併合罪の関係にあるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年六月及び罰金五〇〇〇万円に処し、同法一八条により右罰金を完納することができないときは金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文を適用して全部これを被告人に負担させることとする。

(量刑の事情)

本件は、判示のように、医師である被告人において、昭和五二年、同五三年の両年にわたり合計三億二四九〇万円余りの所得税を免れたという事案である。被告人はその動機として、健康状態が良くないために老後に備えること、医師希望の子供の学費を貯えること、医者仲間の脱税、設備投資分の早期回収等を供述しているが、いずれも脱税を正当化するに程遠いものであり、また、特に健康状態についても巨額の脱税をしなければならないほど深刻な状況にあつたとは認められず、格別斟酌すべきものとも思われない。また、本件犯行の態様も一貫した脱税意図の下に除外した診療収入を銀行の仮名貯金に入れて隠匿したり、証券会社の無記名・仮名の割引債、国債を購入するなどし、あるいは一億三四〇〇万円余りの総所得があつたのに九九万円余りしか申告せず、あるいは三億四〇〇〇万円余りの総所得を全く申告しなかつたというもので、本件によつて免れた所得税額は極めて高額であり、ほ脱率も源泉徴収分を考慮しても九九パーセントにのぼつていて、悪質な犯行といわねばならない。加えて、被告人には、法律上の記帳義務はないとしても、経費について大学ノートにメモ程度の記載をするのみで他には会計帳簿というものは全く作成せず、右のような極端なつまみ申告をしていること、右仮名預金設定による診療収入の除外が昭和四七年ころから始まつたものであることも考え併わせると、被告人の納税意識の稀薄さは甚だ顕著であつたといえる。

以上のような事情に照らすと、近時益々抬頭する医師脱税への批判を別にしても、被告人の刑責は重いといわねばならない。

以上のような事情がある反面、仮名預金の設定にあたつては金融機関側の慫慂もあつたこと、犯行後本件について一切の本税・延滞税・重加算税等の税金を完納していること、医師法違反で有罪に処せられたため昭和五五年一一月すでに医師の免許を取消されて廃業しており、また、本件犯行が広く報道されるなどして、それなりに社会的な制裁を受けていること、前記医師法違反以外には前科前歴のないこと、被告人の健康状態、ボランティア活動などをして反省の態度を示していることなどの被告人に有利な事情や、本件が前記医師法違反の事件と同時審判の可能性のあつた事案であることを考慮に入れても、前示の諸事情にかんがみるとき、被告人に対し主文掲記の程度の実刑をもつて臨むのはやむを得ないと考える。

よつて、主文のとおり判決する。

(小瀬保郎 久保眞人 川口政明)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例